どうして不登校の子どもが増えた?カギを握るのは親子関係の密度【後編】

レインディア藤原さん
レインディア藤原さん

【藤原さんの育児学Vol.71】どうして不登校の子どもが増えているのか《後編》

みなさん、こんにちは。

前回は、子どもが不登校になった時の心構え的な対応方法をお伝えしました。

後半の今回は、そもそも「なぜ日本社会では不登校児童が増えているのか」。その原因を私見で書いていきたいと思います。

「不登校」というセンシティブな問題、その背景を私なりにひも解いていきます。考え方のひとつとして読んでいただければ幸いです。

私が中学校3年生で不登校になったのは、まだ世間では登校拒否と呼ばれていた時代。平成3年(1991年)なので、今から30年以上前になります。

その間、日本では増減はあるものの、ほぼずっと不登校児童数が増加。少子化で児童数自体が減っているので、割合的に見ればどうなることやら・・・。

ちなみに、文部科学省が2021年4月に発表した令和年度公立学校職員の人事行政状況調査によると、精神疾患や病気休職者数が5478人。これは過去最多の数であり、子どもだけでなく、先生までも学校に通えていない実態が分かっています。

教育は、国の根幹となる重要な部分だと思いますが、当事者がSOSを発している状況なのです。

少し古いですが、私が7年程前に講演した時、不登校児童数推移のグラフと同じように増大しているグラフを紹介した事があります。何のグラフだと思いますか?

それは、学習塾の数を表したグラフ。

私が不登校になった1990年頃から、急激に増えていくのが学習塾であり、子どもの自殺や不登校といった問題が社会問題化していきます。

ノーベル賞受賞者を何人も育てた経済学者・宇沢弘文氏は、教育は市場競争に入れてはいけない分野であると訴えていました。しかし、日本は新自由主義の方向に政治が舵取りをし、教育がビジネスの場となってしまったのです。

“投資”という名のプレッシャーに疲弊する子どもたち

コラム前編では、子どもたちが疲労している事が不登校の主要因と書きました。塾や習い事といった過剰な子どもへの投資が、不登校予備軍を増大させているのではないでしょうか。

塾の先生によって助けられたという話も時々聞きますし、もちろん、すべてが悪いわけではありません。しかしながら、グラフの数字は無視できないレベルなのです。

塾の問題は、世界的にも様々な指摘がされています。

北欧フィンランドでは、教育に営利目的な事業者が入る事は禁止されており、学校の先生に多くの責任を付与。近年、経済発展をしてきた中国でも、2021年7月に小・中学生に向けて学習塾禁止令が発令。営利企業としての学習塾は認められなくなりました。

一方の日本は、学習塾大国とも言うべきほど業界が拡大している中、何の対策もされていません。

学習塾や学習教材の通信販売などで、子どもの時間を占有する事は、クリエイティブな思考を生む経験を減らすばかりでなく、そもそもの個性構築やストレス解消の時間さえ奪っていきます。

また、学校の先生の立場になって見れば、生徒がどんな教育を受けているのか分かりませんし、「これから授業で教える内容をすべて知っている」状況。これでは、授業へのモチベーション上がらず、仕事の達成感が得られなくなることは想像にたやすいですよね。

近年、教育格差が叫ばれる日本。勉強のできる子とできない子の差が広がると、授業計画を立てるのはさらに難しく、勉強が好きな子を伸ばすこともできなければ、勉強が苦手な子のサポートもできない状況に陥ります。

インターネットなどで、より学び方が多様化する中、子どもが自分の判断で自由に休めないような学習塾の利用は慎重に検討すべきではないでしょうか。

親子の関係性こそが重要なポイント

不登校児童の増加と比例するようなグラフは、ほかにもあります。

厚生労働省が出している夫婦の離婚数の増加グラフも、1990年辺りから右肩上がり。近年は減少傾向ですが、そもそも結婚数が減っているので、割合的にはどうなのか。

また、文部科学省が出している通級に通う児童数推移グラフ、発達障害児童数推移のグラフも右肩上がりです。この30年で教育環境が劇的に変わってきているのですが、政府の取組が何をしても減少に転じないどころか、逆に増える要因を増やしているのではないかとさえ思えます。

そのひとつ、保育園の整備も私は心配している点。

当コラムでも以前から、待機児童対策と銘打った安易な保育園整備は、親子を引き離すことになり、子どもが親を認知せずに愛着不足の原因となりかねないと警鐘を鳴らしてきました。

アメリカでもこの10年で、親子関係が子どもの発達にどう影響するかの研究が盛んになっています。読み書き・計算能力を鍛えることよりも、親子関係を良好に構築する方が、子どもの忍耐力や突破力、そして幸福感や犯罪接触率などに良い影響をもたらすという研究報告が次々と出されています。

★アメリカの研究が気になる方はこの本をどうぞ→ポール・タフ著「成功する子失敗する子  何が「その後の人生」を決めるのか」(英治出版)。お近くの書店にない場合、『とりだい病院内カニジルブックストア』で購入できますよ。

ここ数年で、助成金目的の保育園乱立、既存保育園や幼稚園の認定こども園化、学童やなかよし学級など、子どもを親から離す施設が日本では増加傾向。

定時制や通信制も、高校や大学ばかりでなく中学校にまで広がり、子どもを受け入れる施設を行政が次々と作る時代。

一方で、ファミリーレストランや商店街、ひと昔前は家族で行く目的となっていたデパート&屋上のミニ遊園地といった、家族揃って行く場は衰退の一途です。

私の住む街では、子育て支援センターも次々設置されていますが、問題を解決するどころか増え続ける問題に対応するのでいっぱいいっぱいという状況。

なぜ、日本では子どもを授かったのに、働いてお金を稼いで他人に子どもを任せるのでしょう?

なぜ、赤ちゃんはママやパパと遊びたがっているのに、遊んであげる時間が少ないのでしょう。

幼少期に親子関係が構築できていないのに、小学校や中学校に通い始めてから問題が現れた時、果たして子どもが親に相談できるでしょうか?

行政や政治が、専門家の意見を聞いて社会整備を行っているのに、それが間違っていると一般市民は感じ取ることはできません。

まずは考えを改め、当事者として問題へ参加することから

ここまで不登校児童が増えるには、親や学校の問題ではなく、社会システムに問題があるのです。

日本にはかつて、福沢諭吉や渋沢栄一など、自国の問題を解決するため、奔走した人々がいました。その努力の恩恵を受ける私たちは、自分の欲求を満たす前に、子どもたちの声に耳を傾けるべきではないでしょうか?

私は、不登校児童数を減らすためには男性の育児参加、またそのための教育と、環境整備が必要だと考えています。

男性が教育に参加すると言っても、PTA活動に出て満足しているような対外的な物ではありません。一対一で親子が向き合う時間を、父親をはじめとした男性が難なく作れる、そんな社会の整備が必要でしょう。

東京や名古屋など、意識の高い企業がある街では、すでに父親の育児参加が推奨されてきています。

また、もうひとつに子どもたちにも有給休暇のような「損害のない休む権利」を用意すべきではないでしょうか。もちろん、そこには親も子どもに合わせて休む権利が用意されなければいけません。

私たち大人は、子どもたちが行動で表しているSOSに対して、今までの考えが間違っていたことを認め、違う取組を始めなければならないのではないでしょうか。

成人なってすぐ生活保護を申請しなければならなかったり、精神を病んでしまったり、自傷行為をしてみたりといった段階になってからは、より支援が大変になっていきます。

不登校児童数がこれほどまでに増えてくると、きっとあなたの近くにも気づいていないだけで苦しんでいる子どもがいると思います。

直接何かしなくても、新聞で不登校に関する記事を読んだり、本屋で不登校に関する本を探してみたり。少し勉強してみるのはいかがでしょうか。これからの人生で、実際に不登校問題に出会う確率は高まっているのです。

不登校に関するご相談を受けられたい方は、いつでも店頭にて直接私にお声かけくださいね。

※掲載の情報は、記事公開時点の内容です。
状況の変化、情報の変更などの場合がございますので、最新の情報は店舗・施設のHPやSNSを確認するか、直接お問い合わせください。

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この記事を書いた人
レインディア藤原さん

Reindeer 代表取締役社長

レインディア藤原さん

北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。

最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。

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