子どもは毎日、切り替えすぎている?学校・家庭・習い事で考えたい“自分のペース”
先生も予定も次々変わる日々。子どもの自発性を育てるために大人が見落としたくないこと
■藤原さんの育児学Vol.149■
みなさんこんにちは。レインディアの藤原です。
先日、高校生の息子の参観日に行きました。
地理の授業では、溶岩やプレートが地形にどう影響しているのかが話題に。妻と私は、観光ガイドのような内容を楽しく聞かせてもらいました。
先生の地理好きが伝わってきて、日本の話題をしていたかと思えば、次はアメリカ大陸、さらにインド洋。海の話から山脈の話へ。さすが高校の授業ともなると、範囲が広いですね。
当たり前ですが、ドイツの湖の名前はドイツ語、日本の湖は漢字。専門用語も次々に出てきます。
こうなると、覚えるのも大変。時代背景も地域も違う内容を扱っているため、私の頭の切り替えが追いつきません・・・。
この時、ふと自分が中学生の時に不登校になった原因のひとつに、この“切り替えストレス”があったのではないかと感じました。
今回は、そういった視点でコラムを進めようと思います。
学校で増える人と役割の切り替え
この2週間ほど前、娘の小学校の参観日も見に行っていました。
DX化が進む今、先生はデジタルサイネージの扱いに四苦八苦しながら、時間をかけて何とか授業を進めておられました。
児童から「ああすればいい」、「こうすれば動くよ」と、デジタルデバイスの使い方を教えてもらう先生の姿。おもしろくもあります。
少し先生が気の毒だなと感じながら、もしかすると、こういう小さなストレスは見過ごしてはいけない問題なのかなとも。
現代日本では、教師不足が課題となり、学校現場では様々な工夫を重ねながら、何とか学校運営をしている状況だということは、みなさんもご存知だと思います。
そうした状況も背景にあるのか、娘の通う公立小学校では、教科担任制や年度途中の担任の入れ替わりなど、昔では考えられなかったことが次々に行われています。
以前は、産休や病気療養などで先生が年度途中に変わることはありました。
ですが、年度途中で1組と2組の先生が入れ替わる。なぜ?
算数はA先生、体育はB先生。高学年になれば分かりますが、3年生や4年生で、先生が1日に複数回入れ替わっているという話も入ってきます。学習内容によるストレスとは別に、違う大人に対応する“切り替えのストレス”が生じてはいないでしょうか。
人に合わせ続けることも、子どもの負担になる
大人になってからでも、一日にたくさんの人と出会い、頭を切り替えるのはとてもストレスを感じます。
年配の方には気を遣い、若いころは異性と目を合わせるだけでも緊張しました。子どもによっては、お母さんと話した後に、お父さんと話すことさえストレスを感じる子もいるでしょう。
部活動の地域展開やPTA、学童や習い事など、どんどん子どもに大人が介入していく社会的な流れがあります。大人はいいと思っていても、子どもたちには多くのストレスを与えてはいないでしょうか。
ひきこもりの状態にある子、AIチャットボットとの会話で心が落ち着くという子と話して感じるのは、本人が「対人恐怖症かもしれない」と思っていても、実は人の入れ替わりに強い負担を感じているように見えるケースがあるということ。
私がそういった若者と一日中ずっと話をしていると、「楽しかった」と言ってくれます。
話の内容がおもしろいからというより、《会話に集中できる安心感》が醸成できているのだと思います。
家庭にもある脳の切り替え
産後の育児では、特に切り替えを求められる場面が続きます。
料理を作ろうとしていたら、赤ちゃんが泣いてオムツ交換を求める。お出かけしようと準備していたら、部屋を汚す。
ママは一日の中で、強制的に脳を切り替えなければならないことが連続するわけです。
夫が家に帰ってきて、オフモードで自分のペースを貫こうとすることに耐えられない気持ちになるのも、当然でしょう。人に合わせるというのは、疲れるものです。
切り替えにくさと、好きなことへの没頭
世界では今、未成年者のスマホやSNSの使い方が問題になる場面も増えています。
依存の背景には、ほかのことに気持ちを向けにくく、切り替えが難しくなる状態もあるのではないでしょうか。
ギャンブルやテレビゲーム、刺激の強い映像などから離れにくくなる人もいます。好きなことをずっとやっていたい。小中生のころの私は、いつもそう思っていました。
「時間が止まれば良いのに!」
でも、現実は学校の授業に部活、塾や家庭の問題。思春期では人間関係で悩み、好きなことに集中できる時間は少ししかありません。
一日の中で何度も頭の切り替えが必要になり、若かった私は、学校モードに切り替える負担に耐えきれず、「絶対に行かない」という選択をしたのだと思います。
考えを変える力は経験の中で育つ
柔軟な発想、革新的思考、物事を斜めから見る力、クリエイティビティ(創造力)、発想の転換。
世の中には、同じような意味を持つ言葉がたくさんあります。そんな言葉を聞いても、若い私は頭を切り替える能力が乏しかった。
しかし、これは私だけではなく、恐らくみなさんもそうだったのではないでしょうか?
子どもたちを見ていても、熱中していることを途中で止めさせられると、明らかにテンションが下がりますよね。
ランナーズハイやセロトニンといった言葉もありますが、継続しなければ得られない満足感もあります。
読書も、最初から楽しいわけではありません。本の世界に入り込めてから、楽しめるようになります。
タイパを優先する現代人が失ったもの。それは、達成感や満足感といった、生きる喜びに直結する感覚なのかも。
間違いを認め、考えを変えること
そして意外にも、この“考えを変える”行動は、AIとのやりとりでも難しさを感じる部分。間違いを指摘しても、もっともらしい理由づけが返ってくるように感じることがあります。
私自身、AIにダメ出しをして、やりとりを終えることもしばしば。同じような経験を、先日、学校の先生と話をしていた時にもしました。
修正や見直しにつながらない対応。
人間は完全ではない。AIもまだ発展途上。
そういった前提を認められないと、改善もなければ、成長も見込めません。こう考えると、大人になる能力のひとつに、“考えを変える能力”という一面があることが分かります。
様々な経験をし、世界の文化を知り、多様な考え方を知る。そうして、考えを変える力が育ってくるのかもしれません。
自分の気持ちを置き去りにしない
一方で、周囲に合わせ続けるあまり、自分の気持ちを後回しにしてしまう人もいます。
幼少期から叱られたり、放置されたりして、自分の意思を無視され続ける。
保身のために周りに合わせ、自分では考えないようにしてしまう。
本当の自分の気持ちを、心の奥底へしまい込んでしまう・・・。
そうした状態が長く続くと、大人になってからも、自分をすり減らしてしまうことがあるのかもしれません。
子どものリズムを崩さないために
また、5才の幼稚園児が、週に9つも10も習い事をしている話を耳にすることがあります。
子どもにとって、習い事ごとに頭を切り替える負担が大きくなることもある。そのことを知って欲しいと思います。
ダンスやピアノ、体操に英会話スクール、プログラミング。一見、多数の体験を与えているように感じます。
これを例えば、言語に置き換えてみます。
月曜に中国語、火曜に英語、水曜にスペイン語、木曜にタガログ語、金曜に古文、土曜にポルトガル語とプログラム言語、日曜に韓国語。そして家では、日本語をひと言ふた言話して就寝。
これをパパやママが毎日、苦もなくしているのなら、それは超有能なご家庭でしょう。
家庭に帰ると親の顔色をうかがい、学校や幼稚園でも次々に頭を切り替えなければならない。
子どもによっては、解決どころか、かえってストレスを増やしてしまうこともあるのではないでしょうか。
自分らしく生きるために
大人になると、ひとり旅をしたり、座禅をしたり。最近ではサウナなどで自分と対峙する時間を作ることで、心を整えることができます。
“自分らしく生きる”とは、現代人の合い言葉のように使われています。その裏には、“脳を切り替えたくない”気持ちがあるからかもしれませんね。
自分のペースを乱されるのは、とても不愉快なもの。
子どもたちの自発性を育てるために必要なのは、子どもたちのリズムを崩さないことではないでしょうか?
良かれと思って、子どもを取り巻く様々な取り組みが発案されています。ですが、それが本当に子ども目線で考えられているのか?
知識があっても、間違いを認められない存在になっていないか。そんなことを大人自身が振り返る必要もあるでしょう。
50才を前に、自戒を込めて今回のコラムを締めたいと思います。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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この記事を書いた人
Reindeer 代表取締役社長
レインディア藤原さん
北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。
最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。
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